TRIVIA「エサと水」
牛や豚、鳥など、その生産物や労働力が人間にとって有用なものとなる動物たちを経済動物と呼ぶ。その中で牛は非常に効率の悪い動物と言える。牛の体重を1kg増やすためにはその8倍から10倍のエサが必要とされ、豚の約2倍、鳥の約3倍以上に及ぶ。しかも食肉になるのは約50%前後であり、残りは皮、骨、内臓だ。つまり実質的には、牛肉を1kg作るために20kg前後のエサが必要になる。エサの中心は穀物であるため、単純計算すると牛肉消費量が1トン増えると、穀物需要が20トン増えることになる。これだけの穀物を国産でまかなうのは不可能であり、大半を輸入に頼っている。世界の穀物価格が和牛に与える影響がどれだけ大きいか理解できるであろう。
そして牛は、食べたエサの約5倍の水が必要と言われる。つまり牛肉1kgを作るためには、約20kgのエサと、約100kgの水が必要ということだ。牛肉が高価になる一因であるが、美味しさや栄養価の高さにも繋がっている。価値に見合った価格を払うことが、日本が誇る和牛を守るためにも重要だ。
参考:ポール・ロバーツ著 神保哲生訳 『食の終焉 グローバル経済がもたらしたもうひとつの危機』 ダイヤモンド社