BREED 和牛巡礼VOL.6「田村畜産牧場」

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世の中に無数に存在するブランド牛。

その大部分は地域ブランドであり、育てる人間はもちろん、飼料まで千差万別な場合がほとんど。

そういった状況の中でより一層注目されるのが個人ブランドであり、その中でも最高品質の個人ブランド牛として君臨しているのが田村牛だろう。

私自身、生まれて初めて食べ物で震える程感動したのが20年前に食べた田村牛だった。

今ほど牛肉を食べ込んだ経験もなければ知識もない若者だったが、その時の衝撃は今でも鮮明に憶えている。

そんな田村牛の特徴は何と言っても、その味の良さ。

綺麗な霜降りはあっさりとしていて香りも芳醇、何より赤身自体の味に深みがある。

写真①

田村牛を生み出す田村畜産の起源は明治30年代にさかのぼり、家畜商であった初代藤七が農家に牛を預けて農耕用に飼育していた。

時代の変革に伴い、昭和42年に自社牧場における肥育を始め、現在の2000頭以上まで成長を遂げた。

現在、田村畜産を率いるのは4代目・田村正道さん(以下、田村さん)。

東京農業大学で経営、京都大学で飼料の研究を行ってきた。

そして研究だけでなく、現場で積み重ねた経験による目利きと技術を身に着けている。

田村畜産牧場は緑豊かな山間にあり、いくつも連なった牛舎は心地よい風が吹き抜けている。

車を降りて牧場に入っても、嫌な臭いなどなく、牛舎内にはクラシック音楽が流れ、リラックスした牛達は愛くるしい顔で出迎えてくれる。

写真②

田村さん自ら買い付けてくる素牛は、選び抜かれた資質を持った純血の兵庫県産但馬牛と他県産でも但馬牛の血が濃い黒毛和牛の雌のみ。

月齢8か月程度で導入された素牛は、月齢や牛同士の相性を考慮し、数頭づつ仕切られた枠で飼育される。

この頃は、成長する骨格をしっかり作ったり、肥育後期にしっかりと餌を食べ込める丈夫な胃袋を作るために独自配合の粗飼料を中心が中心。

写真③

月齢13か月頃から1枠当たりの頭数を減らしたり、飼料も徐々に濃厚飼料へと切り替わる。

出荷前2か月前位からいよいよ仕上げ期になり、1枠当たりの頭数は1頭か2頭で、飼料も仕上げ期用のもの。

ちなみに但馬血統以外の田村牛は月齢32か月を目安に出荷され、純但馬血統については35か月以上、40か月を超える場合も多い。

実際、飼育後期の牛舎には月齢40か月を超える純但馬血統の個体が何頭もいて、丸々と肥えた立派な体躯をしている。

ちなみに田村さんは「満肉(マンニク)、満肉」と何度もおしゃっていたが、その言葉の意味がよく分かる。

写真④

田村さんだけでなく、田村さんをサポートする熟練のスタッフの方々も積み重ねられた経験と研究結果に基づいた目利きと技術を持ち、毎日その目で牛の健康状態を確認し、手間を惜しまない愛情を注いで世話をしていく。

ブラッシングをしている時には、心地良さそうにスタッフの方に懐く姿が目の前で見れる。

写真⑤

牛舎内の餌箱の中を見てあることに気付くのだが、それこそ田村牛の味の決め手でもある。

一般的な濃厚飼料は乾燥させたトウモロコシが主体となっているが、麦が主体となっている。

京都大学での研究と現場での試行錯誤を繰り返しながら開発した独自の配合飼料は「ヴィンテージビーフ」と名付けられ、田村牛特有の味わいと脂質を作り上げてくれるのだ。

畜産業界ではほとんどない、添加剤や防腐剤が一切入っていない原材料100%指定で、人間が当たり前のように食べる飼料、それが「ヴィンテージビーフ」。

写真⑥

田村畜産牧場を見て印象に残るのが笑顔。

牛達を見る田村さんの笑顔、スタッフの方々の笑顔、そして牛達も笑顔。

この笑顔が田村牛の隠し味になっているのかもしれない。

最後に田村さんの信念という言葉を紹介したい。

『牛は飼うものではなく、愛情と汗の積み上げで創り上げるもの』

田村牛が何故最高品質なのか。

その理由が詰まった言葉ではないだろうか。

写真⑦ (640x481)

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