BREED「個体識別番号で何が分かるのか!?」

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肉好きを自認する人であれば、誰でも1度は個体識別番号を検索したことがあるのではないだろうか。個体識別番号自体は広く一般的に認識されているが、そこから得られる情報は、我々消費者が分かりやすいものとは言えない面もある。私も昔は雌なのか雄なのか、産地は何処か程度の情報だけしか得ていなかった。しかしながら、本来はもっと多くの情報が詰め込まれたものなのだ。

そもそも個体識別番号は、2001年にBSEが日本で発生したことに端を発し、牛が誕生してから流通するまでの履歴を管理するために利用されている。利用方法としては、(独)家畜改良センターのホームページ上にある《牛の個体識別情報検索サービス》に10桁の番号を入力する。では、実際どんな情報が得られるか検証してみたい。ただし、あくまでも消費者の視点としての検証であることをご了承していただきたい。

①性別

雌か雄かどうかが確認できる。雄であれば去勢されているのが一般的であろう。

②等級

残念ながら等級の情報は得られない。A5やA4といった等級を個体識別番号から確認できると便利なのだが、個体識別番号がBSEの発生から義務付けられたとこを考えれば仕方ないのかもしれない。

③産地

最終産地だけでなく、生まれた時からの全ての産地を知ることができる。一般的なのは、子牛を生産する繁殖牧場の都道府県と子牛を購入して肥育する肥育牧場の都道府県の2つ。

また、不思議な履歴を見ることもある。以前食べた牛肉の話だが、出生は産地Aで、そこから産地Bに転入され10ヶ月程度肥育され、さらに産地Cに転入され1年ちょっと肥育されていた。通常であればと畜するまで産地Bで肥育するのだが、何かしらの理由で産地Cに転入されているのだ。肥育中の牛を他の場所に移すということは、その牛にとってストレスであるだろうし、牛がストレスを感じれば食欲の減少や肉質への悪影響も考えられる。産地Cにおけるブランド牛肉の基準を満たせば、当然産地Cのブランド名を名乗ることになる。こういった牛肉と産地Aから産地Cに直接転入し、ずっと産地Cで肥育された牛肉の違いが分かるのも個体識別番号の恩恵と言える。

④肥育期間

「出生」から「と畜」までの期間で把握できる。最近はサシの量よりも肉自体の味が注目されてきているので、肉の味に影響が大きいと言われている肥育期間は有益な情報として利用できるだろう。数多く見ると、27,8ヶ月位が平均的な感じを受けるし、稀に35ヶ月を超えるような牛もいる。

⑤生産者

同じブランド牛肉でも生産者が違えば、当然それぞれ中身は違ってくる。生産者によって、仕入れる子牛の血統、餌、肥育期間、牛の健康状態、その他のこだわり等が違うからだ。

⑥血統

昔の血統管理は雌主体であったが、人工授精技術の向上に伴い種雄牛(しゅゆうぎゅう)と呼ばれる雄主体に移行した。肥育農家さんが血統を考慮して子牛を購入する場合、対象となる牛の父、母の父、母の母の父という3世代の雄で考慮するのが一般的ということだ。勿論、それぞれの肥育農家さんによって、それ以外の様々な要素を考慮しているのだろう。個体識別番号で分かる血縁は母のみなので、血統の情報は非常に乏しい。

⑦その他

と蓄場所も把握することができるが、情報はここまでなので、その後の競り落とした問屋さん、加工業者に関する情報はない。またブランド名や出産経験等も含まれていない。ちなみにと畜日からある程度の熟成期間の予測も可能と言えるだろう。

実際にある牛の個体識別番号を検索してみたい。番号は[0252724044]。

個体識別番号

まず雌であり、兵庫県産の子牛を三重の松阪で肥育している。また出生は、兵庫県の中でも最も血統管理にこだわりのある美方郡だ。そしてその宝のような子牛を購入して肥育したのが、松阪で有名な肥育農家である畑さん。驚くべきはその肥育期間で、なんと46ヶ月。経産牛(お産を経験している牛)以外でここまで肥育期間が長い牛は非常に珍しい。この時点で涎がすでに止まらない方も多いのではないだろうか。おそらく未経産であると予想されるので、性別、子牛の産地や肥育期間等から、松阪牛のなかの松阪牛といえる『特産松阪牛』だと思われる。また、東京の芝浦ではなく、松阪食肉流通センターでと畜しているため、東京ではホルモンに分類されるハラミも正肉とセットになっているのだろう。

正直、ここまで凄い履歴は初めて見た。。。

個体識別番号を検索することによって得ることのできる情報から、その牛の生涯に思いを馳すことができる。また自分の好みの牛肉に出会った時に個体識別番号をチェックすることで、自身にあった生産者を知ることもできる。