COLUMN「生産者のブログが面白い」
「食べログ」を筆頭にグルメブログなど消費者側からの情報発信がネット上にはたくさんあるように、実は牛の生産者や販売業者の方々のホームページやブログなども結構存在する。さすがにプロの方々であるだけに、牛の繁殖や肥育に関する専門的な知識であったり、畜産・食肉業界の最新情報など消費者が見てもためになる内容が多い。何と言っても、牛や牛肉に関する知識や情報が満載で、牛肉好きにはたまらない。
そんな生産者のブログの中からいくつかをご紹介したい。
まずは宮崎県の山﨑畜産さんが公開されている「べぶろぐ」だ。“べぶ”とは宮崎の諸県(もろかた)地方の方言で牛のことらしく、まさに牛にまつわる様々な情報がかなりの更新頻度で公開されている。例えば2013年1月13日の記事では「3等級の肉が足りないらしい」というタイトルのもとに、その原因として
・量販店の品揃えがA3中心になっている
・口蹄疫の後遺症
・倒産した安愚楽牧場が3等級を中心に生産していたのにそれが無くなった
という業界紙の見立てを紹介しながら、3等級ばかり売れては、即ち4等級や5等級が売れなくては生産者側の利益確保が厳しいという実情を訴えている。またあの安愚楽牧場事件がこんなところにも影響しているのかと驚かされる。最近は口蹄疫問題についての記事が多く、業界の発展と向上を願う熱い思いに溢れている。
続いては滋賀県で近江牛を生産されている木下牧場さんの「近江牛の木下牧場ブログ」。1月20日放送のNHK「うまい!」で特集が組まれたり、その取り組みが食料自給率向上に寄与する環境保全型モデルとして「フード・アクション・ニッポン アワード 2010」を受賞されたりしている、牛肉好きの間では有名な牧場だ。全国でも数少ない繁殖肥育一環農家さんで、これまた牛肉好きには有名な滋賀県草津のお肉屋さんで、私もちょくちょく熟成肉やスジ肉を購入させていただいている「さかえや」さんと一緒に、国産飼料にこだわった牛の肥育に取り組むなど、和牛の新しい価値づくりに取り組んでいる。ブログは牧場での出来事を中心に日々綴られており、牛への愛情がひしひしと伝わってくる。
牛への愛情に溢れていると言えば、兵庫県・但馬の田中畜産さんが運営されている「田中畜産の牛飼い記録」もすごい。田中畜産さんは、但馬の山々に囲まれているという牧場の地理的特徴を活かし、放牧、粗飼料(草)のみでの肥育、そして販売にまで取り組まれている。また経産牛(お産を経験した牛)の価値向上にも取り組まれており、“敬産牛”と名付け、その牛肉の販売まで手掛けている。ちなみに私は「ふくさと」という放牧敬産牛のお肉をいただいたことがあるが、古酒のようにまろやかで味わい深かったのを覚えている。ブログには日々の牛飼いの記録が綴られており、牛の成長をつぶさに観察できて楽しい。また、ホームページでは実際に販売された牛をご主人がと畜場に連れていくシーンなども公開されており、牛を食べることのありがたさや幸せを深く感じられる。
今回紹介させていただいた以外にも、いろいろな生産者の方々がインターネットを通じて牛や牛肉の情報を発信されているので、自分のお気に入りのブログなどを探してみてはいかがだろうか。