COLUM「ある精肉店のはなし」
「ある精肉店のはなし」という映画が現在制作中で、2013年公開予定だそうだ。大阪にある北出精肉店というお店で働く家族を描いた作品。応援する会が組成されていて、製作協力金を募集中である。製作協力金Aは一口5,000円で、映画のエンドロールに氏名が記載される。製作協力金Bは一口30,000円で、エンドロールに加えてプレミアム試写会への招待、肉製品などが付いてくるそうだ。詳しくは公式ホームページをご参照いただきたい。
(以下ホームページより転載)
肉と肉、いのちといのち
日常食卓にのぼり口にする肉。しかしいのちあるものが肉となり食卓に届くまでの行程は、多くの人に知られるところではない。大阪で出会った北出精肉店では、7代に渡り家族で牛を育て、手作業で屠畜を行い、その肉を自営の精肉店で販売し、生計を立ててきた。彼らは700kgにもなる牛を命をかけて屠り、見事な手つきで内臓を捌く。確かな経験と技術により、牛は鮮やかに肉になっていく。厳かに行なわれるその作業の光景は、屠畜にまつわる様々な先入観を払いのけ、そこからは有機的に関係し合う肉と肉、いのちといのちの姿が実体を持って立ち現れてくる。
しかし、彼らが利用し102年続いてきた公営と畜場が、輸入肉や大規模屠場への統合の影響により、今春閉鎖することになった。そして最後の屠畜作業を記録することから本作の撮影は始まった。
暮らしから見えてくるもの
熟練の技を持つ彼らだが、「自分たちの仕事は、子どもの頃から自然に倣い覚えたことで、何も特別なものではない。暮らしの一部だ。」と言う。店主として店を切り盛りするかたわら、高齢化、過疎化が進む地域に尽力する長男。年に一度、心躍るだんじりにひときわ思い入れがある次男は、太鼓作りをしながら、屠畜の仕事から見るいのちの大切さを地域の学校で話して廻る。長女は一日のほとんどを台所で過ごし、家族のために温かくおいしい食事を作る。孫は、将来肉屋になりたいという中学一年生の元気な男の子。いつも微笑みながら家族を見守る87歳の母。ごく平穏な家庭の日常がそこにはある。
しかし、彼らの生活を知ることは、被差別部落に生まれ、精肉業を引き継いできた中で、差別や偏見と向き合い、葛藤し、乗り越えようとし続けてきた家族、そして地域の歴史を知ることでもある。
いのちあるものをいただき、自らを生かし、他者と関わり、社会とつながってゆく。この誰しもに共通するごく当たり前の営みも、その実体が見えなくなることで偏見や差別、先入観を作り出してきた。
本作では、あらためて彼らの日々の暮らしを丹念に見つめていくことから“生の営み”の本質とは何かを捉え直していく。