TRIVIA「F1のハナシ」

13.4.2 ホルスタイン

もちろんクルマのF1ではない。

いわゆる交雑種のことで、“Filial 1=first filial(generation)”の略だ。遺伝学における雑種第一代のことで、メンデルの法則のうち、親の形質の優性形質のみが子に現れるという「優性の法則」を使い、和牛の風味を引き継いだ牛肉を、お手頃な価格で提供するために改良された牛のことを指す。ホルスタインの雌と和牛の雄を掛け合わせることで、短期間で体重が増加するというホルスタインの形質と、肉質が良くサシが入りやすいという和牛の形質を同時に引き継ぐことを実現している。他にも病気に強いとか、ホルスタインほど大型にならないためお産がしやすいといった効果もあるそうだ。農水省の畜産統計上は乳用牛に分類されており、1991年の牛肉輸入自由化を契機に普及したようで、2012年2月発表の畜産統計によると、全国の飼育頭数に占める割合は約18%、乳用牛に限れば約56%を占める。

F1品種は、牛肉よりもむしろ野菜や植物の世界で盛んに用いられており、均一の形質で、収穫時期も揃うため、大量生産・収穫に向くという効果がある反面、種が取れないため種苗会社から毎年種を買わなくてはいけない(ために支配されやすい)とか、天候不良等で全滅する可能性が高いなどとの問題点も指摘されている。

純粋な和牛に比べれば肉質や脂肪交雑が劣るのは致し方ないが、父親の血統や肥育方法を工夫することで品質向上の余地は十分あるだろうし、昨今脚光を浴びている熟成の技術などを用いれば、新しい市場を開拓する可能性も見込める。人口増加、食糧不足という世界的なトレンドの中で、牛肉の価格が上方硬直することは避けられないだろうから、F1種のようなお手頃価格で楽しめる牛肉の研究にも注目したい。