BREED 和牛巡礼VOL.2 「川岸牧場」

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一口食べて、その味わいに驚かされるお肉がどれほどあるだろうか。数々の品評会で優秀な成績をおさめ、兵庫県内は勿論、県外においても、神戸牛生産者の中で特に評価されているのが川岸さんだ。同じ神戸牛や他の黒毛和牛生産者や精肉店の方に話を聞いても、川岸さんの名前はよく耳にする。曰く、雌の但馬牛の生産者なら川岸さんだ、と。

山々に囲まれ、のどかな雰囲気を残した兵庫県西脇市黒田庄町に川岸牧場はある。すぐ裏手には加古川が流れ、川のせせらぎや山からの吹き降ろす風がなんとも心地良い。

川岸牧場では淡路家畜市場と但馬家畜市場但馬牛から導入した但馬の純血種のみを約300頭肥育しているが、驚くべきことにその全てが雌牛。実は兵庫県産の神戸牛や但馬牛は、そのほとんどが去勢で雌牛は少ない。これは兵庫県産の但馬血統の素牛のセリで、松阪や近江の有力生産農家さんとセリで競う為に、素牛の価格自体が釣り上がってしまうためなかなか雌牛を導入できないという事情がある。その上、雌の但馬牛は体が大きくなり難いため、商売的に考えても効率が非常に悪いのだ。

牧場に到着して車を降りるといきなり驚かされる。牛舎の清掃に気を使っているところでも牧場特有の臭いはある程度感じられるものだが、ここ川岸牧場ではほとんど感じられないのだ。そしてその理由は牛舎に入ってすぐに分かった。通路はもちろん、牛達のスペースが驚くほど清潔なのだ。牛達が入っているマスの床にはオガクズ等が敷かれ、その状態から、非常にこまめな清掃をしていることが良く分かる。そして障害物の無い風通しの良さから、益々臭いが感じられない。牛舎は育成用のものと仕上げ用の牛舎に分けられ、導入された素牛は約1年間育成用の牛舎で過ごす。育成用の牛舎では1マスに4頭で飼育され、丈夫な内臓や骨格を作るために稲藁などの粗飼料を中心に与えられる。育成期間が終わると仕上げ用の牛舎に移され、牛同士の相性を見ながら1マスに2頭分けられていく。清潔で広い空間の中で牛達は粗飼料から濃厚飼料に徐々に移行していく。また、仕上げ期間の牛舎は木造作りで、牛達をリラックスさせるために牛舎にはモーツァルトが流れていて、牛達は皆それぞれのマスの中でくつろいだ姿を見せてくれる。

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牛舎で親子3代揃って牛達の様子を見ている姿は温かみがあり、牛達への愛情がひしひしと伝わってくる。川岸さんには色々なお話をうかがったが、その中でも印象的だった言葉を紹介したい。過去に川岸牧場のお肉を食べて心を奪われたことのあるC私の『何が他の牧場と違うのか?』という質問に対して一言、『特別なことは何もしていない。ただ当たり前のことをしているだけ。』と言う。
素人から見ても、今まで見たことのある牧場と違うのは一目瞭然なのだ。だが、『特別なことは何もしていない、ただ当たり前のことをしているだけ。』と言う。その言葉から伝わる拘り、愛情、プライド。『当たり前』という言葉の重みを感じる。こういった牧場があることに感謝したい。そしてこういった牧場に出会えたことにも感謝したい。

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ちなみに川岸牧場の牛達は神戸西部市場や加古川市場に出荷される為になかなか東京で食べることはできないのだが、2011年に川岸牧場直営精肉店として、兵庫県西脇市に【肉処 樹】がオープンした。店舗では川岸牧場のお肉が購入でき、個体識別番号だけでなく血統まで表示されている拘りようだ。ネット通販についてはまだ開設されていないが、電話注文ができるので、興味のある方は試してみてはいかがだろうか。

店舗名:肉処 樹(タツキ)
住所:〒677-0016 兵庫県西脇市高田井町342−1
電話番号:0795-24-1229

ちなみに私はすでに何度か購入して、自宅であの但馬牛・神戸牛を味わっている。

(文責:CBO)