BREED 和牛巡礼 vol.5「淡路家畜市場 」

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日本全国で頭肥育されている黒毛和牛。その祖先を辿れば、そのほとんど全てが兵庫県産但馬牛にたどり着く。兵庫県産但馬牛は全国でも類を見ない徹底した血統管理により、現在でも但馬牛の子牛は兵庫県内だけで閉鎖管理された血統であり、その子牛が買えるのは当然兵庫県内だけある。そして兵庫県産但馬牛の子牛のセリは兵庫県の中でも但馬家畜市場と淡路家畜市場の2箇所のみで行われている。
現在の黒毛和牛の礎を築いた名牛・田尻、中土井系の血統を濃く残した美方産の但馬牛が多く出荷されるのが但馬家畜市場では、セリは6月と8月を除く第2水曜日に。
一方、曜日に関係なく毎月18日に子牛のセリが開催されるのが淡路家畜市場で、今回(201311月)はそのセリを見学する為に、遂に淡路家畜市場に足を踏み入れることになった。
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早朝一番の飛行機で羽田を発ち、神戸空港からはレンタカーで一路淡路島を目指す。明石海峡大橋を渡り淡路家畜市場に到着すると、すでに市場の周りは子牛を運ぶトラックで埋め尽くされている。入り口を入って目に飛び込んできたのは、市場内を埋め尽くす圧巻の子牛達。どの子牛も手塩にかけて育てた繁殖農家さんの思いが伝わるような素晴らしい個体が揃っている。それにしても子牛とはいえ、やはり牛は大きい。9ヶ月から10ヶ月肥育された子牛の重量は250kgほどあり、想像していたよりも遥かに迫力がある。確かに最終的な出荷時の重量が700kg800kgというのを考えれば、子牛で250kgというのはごく当たり前のことなのかもしれないが。
事前にチェックしていた名簿によると今回の出荷頭数は434頭(198頭、去勢236頭)ということであったが、それを遥かに超える頭数のように感じ、また待機中の子牛の体を触り、隅々まで見ていく購買者の真剣な眼差しには圧倒される。兵庫県内はもちろん松阪や近江といった地域をはじめ、但馬牛を求めて全国から肥育農家さんが集まっていて、知り合いの生産者さんもいればネットの中で一方的に知ってる生産者さんの姿も見える。セリの会場は半円形の雛壇状になっていて、その中心に11頭やってくる子牛を肥育農家さんが手元のボタンを使ってセリ落とす。ここ数か月子牛の値段が高騰しているとは聞いていたが(201311月時点)、知り合いの肥育農家さんなかなか狙った子牛が買えないと話す方もいた。逆に繁殖農家さんにとっては嬉しい状況のようで、セリ落とされる価格が決まると笑顔で頭を下げる方もいる。実際平均価格を見ると雌が約50万円、去勢が約60万円で1年前に比べると約10万円ほど高騰しているようだ。この10万円の差は肥育農家さんにとっては死活問題であろうが、子牛を買わないことには仕事にならないのも事実。非常に頭の痛い状況であろう。ちなみに我々消費者がお肉を買う場合、グラム当たりの単価は去勢よりも雌の方が高いが子牛のセリ値では逆転している。これは去勢の方がサシも入りやすい上に体が大きくなるので、最終的な成体での1頭当たりの値段(単価×重量)としては高く売れるからだ。この2013年11月のセリで出荷される但馬牛を2年後どこかで口にすることができるのか。もし実現するのであればなんとも感慨深い。
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日本はもちろん世界に向かって和牛の素晴らしさを伝えることのできる但馬牛。その一端に触れることができ、益々その世界に引き込まれた。
そして新たな夢も。
有志を募り、但馬牛の委託肥育をすることが出来たら。有志で子牛を選ぶ段階から始め、それをセリ落としてもらい、牧場には定期的に通い、できれば屠畜にも立ち会う。そして最後は有志はもちろん、肥育に係ってくれた生産者を交えて、最高のお店でその但馬牛を食べる。想像しただけでも興奮が抑えきれなくなる夢ではないか。現代の行き過ぎた生産効率・低価格への追求によって、我々消費者が目をつむりがちな食べ物の安全性。日本のようにホルモン剤の使用が禁止されていて、手間暇を惜しまず育てられた和牛は食味の良さはもちろん安全面の心配もない。但馬牛の委託肥育という夢を通して、安全なのは当然、食味へのこだわりの為に生産者がかけてくれた手間暇に相応しい値段というものを肌で感じ、日本の宝である和牛をより身近に感じることが出来るのではないだろうか。
その夢が叶えるために、この淡路家畜市場という場で今回以上に真剣な顔付きで子牛達を見つける私の姿があるはずだ。
(文責:CBO)