COLUMN 「北の焼肉タウン 北見」

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きっかけはこのBRUTUSだった。

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2006年10月15日号の特集は「牛肉」。その中で焼肉タウンとして北見と下関が紹介されていた。

それによると、北見市は人口約12万人に対し焼肉店が約60店もあり、人口に対する密集度が尋常でないとのこと。また、この特集を見た後すぐに何かのラジオ番組の中で、北見市は日本一の焼肉タウンであると紹介されていたのを聴き、いつか訪れてみたいと長年願っていた。すると先日、短い時間ではあったが北見市に滞在する機会に恵まれた。そこで今回は北見の焼肉事情についての特集をお届けしたいと思う。

北見市に降り立った私は、すぐさまJR北見駅にほど近い北見観光協会を訪ね、北見の焼肉事情についてお話を伺った。観光協会の方々はとても親切で、いろいろな情報を教えてくださるので、北見を訪れる際にはぜひ立ち寄られることをお勧めする。

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1. 焼肉タウンの歴史

焼肉タウン誕生の謎を紐解くには、なんと屯田兵にまで歴史を遡る必要がある。屯田兵とは明治時代に、当時高まりつつあったロシアの脅威に対抗するため、北海道の開拓と警備にあたった兵士と部隊だ。明治になり天皇が牛肉を食したことをきっかけとして急激に拡がった肉食だが、軍隊が携行食として牛肉の缶詰を採用したことも牛肉需要の拡大に影響したようだ。北見地区には明治30年から屯田兵が入植し、その屯田兵に肉を納めるために明治33年に屠場が開設されたとの記録が残っている。その後屠場の経営母体や場所は何度か変更を繰り返したようだが、北見地区が昔から同エリアの重要な食肉供給拠点だったことが焼肉タウン誕生に大きく影響していることは想像に難くない。 参考:北見市の市史編纂ニュース「ヌプンケシ」

因みに明治の頃は“野付牛村”という名前だったそうだ。野付牛と名付けるくらいなので野生の牛でもいたのだろうかと思ったが、アイヌ語の「ヌプンケシ」(野の一方の端)がなまって“野付牛”になったとされている。その後昭和17年に野付牛町から北見市となり、平成18年には留辺蘂町、端野町、常呂町と合併し、4市町区域に新たな北見市が設置された。

北見で最初の焼肉店は「力(リキ)」というお店だそうだが残念ながら現存していない。その次にできたのが「大昌園」で昭和31年創業とのこと。こちらは今でも現役だ。

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昭和30年以降は全国的にも焼肉が普及する時期であるが、当時国鉄北見駅の裏側に屠場があり、新鮮な肉が身近にあった事が焼肉タウンとして北見が成長する礎になったようで、その後焼肉店の数が増え、現在は市内に約60店舗の焼肉店が存在している。また北見では、家庭でも気軽に焼肉を楽しむ習慣があり、なんとお肉屋さんが肉などの食材はおろか炭と七輪まで宅配してくれるらしい。

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寒い時期でも庭や駐車場などで炭火を囲んで焼肉を楽しむくらい、焼肉は北見市民の文化として根付いているのだ。

 

2. 北見焼肉の特徴

ご存知の方も多いと思うが、北海道ではハラミのことをサガリと呼ぶ。北見でもそれは変わらない。そして北見では内臓系が人気で、北海道新聞の調査によれば、北見市民の好きな部位1位はサガリ、2位はホルモンだそうだ。今回の訪問で3店舗にお邪魔したが、どのお店のサガリも確かにレベルが高かった。

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また北見の焼肉店の特徴として、生ダレを挙げることができる。これは加熱処理をしていないタレのことで、どのお店も基本的には作り置きせず、毎日タレを調合しているそうだ。当然お店によってレシピが違うので、いろんなお店の生ダレを食べ比べてみるのも面白い。

そして北見焼肉の締めの定番といえば「目丼(めどん)」。いわゆる目玉焼き乗せご飯のことだが、ここに焼肉のタレなどがかけられている。元祖は「板門店」というお店で、こちらでは目丼のみの注文はお断りだそうなので注意が必要だ。ただしすべての焼肉店で提供されているわけではないようなので、どうしても目丼で締めたい場合はあらかじめお目当てのお店に確認しておくか、「板門店」にハシゴできる胃袋の余裕を確保しておくことをお勧めする。

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印象に残ったメニューは、「香風園」のミノ刺し。ミノ刺しの上に山わさびがかけられており、ここに醤油を回しかけていただく。山わさびの風味と強めの辛味がミノとマッチングしていて美味。酒のあてにもってこいだ。また「香風園」ではミノ焼きのことを”モーセン”と呼んでいた。面白い。

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3. 「北見厳寒の焼肉まつり」

北見の冬の風物詩といえば「北見厳寒の焼肉まつり」だ。

厳寒の焼肉まつり

これは2000年の2月29日(肉の日)に始めて開催されて以来今年で15回目を迎えた名物イベント。参加者はマイナス10度前後の屋外会場で七厘を囲み、焼肉を頬張りながらお酒を楽しむらしい。当然油断しているとビールなどは凍ってしまう。

厳寒の焼肉まつり写真

極寒の地であることを逆手に取った、なんともユニークな焼肉まつりだ。スタート当初はオリンピックになぞらえて4年に1回の開催を予定していたが、あまりに人気のため毎年開催になったとのこと。一度は参加してみたい。

 

4. 日本初Facebook自治体「北見ニクマチ」

北見市民の有志の方々が、北見を全国にPRしたいとの思いから設立されたのが「北見ニクマチ」。

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これはFacebook上の架空の自治体という設定で、「いいね」を押せばだれでも町民になれる。そして毎月29日には町民の交流、そして北見市の焼肉店の振興を目的とした「焼肉サミット」が開催されている。町長の”霜降カル美”さんにお願いして焼肉サミットの写真をお借りしたが大人から子供まで、一緒になって焼肉を楽しんでいる姿はなんとも羨ましい。

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筆者も町民の一人なので、いずれ参加したい。地域の特徴である焼肉をテーマにしたFacebook上の自治体というストーリーが秀逸だったせいか、設立してすぐにメディアにも取り上げられ一躍全国的に有名になった。これも素晴らしいのだが、その後も毎月焼肉サミットを開催しながら、焼肉というもともと地域にあった習慣を通じて町民同士のリアルな繋がりを育成し続けているところがもっと素晴らしい。町長さんの許可をもらい、Facebookページのアドレスをリンクしているので、興味がある方は是非町民になることをお勧めする。

 

焼肉が地域の社会資産として根付き、地域の人々を繋ぎ、地域を支えている。

焼肉が持つパワーをまざまざと見せつける街、北見。

恐るべし。

 

※番外編

北見訪問から約1週間後、なんと下関にも訪問できる機会に恵まれた。こんな幸運もあるもんだ。早速3軒ほどハシゴした。因みに「アリラン」というお店では、ギヤラのことを”ピッチ”と呼んでいた。こんな発見も焼肉店巡りの醍醐味だ。

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翌日のお昼にいろいろ取材をしようと企んでいたのだが、生憎の大雪で急遽帰京を早めることに。

心残りだ。