COLUMN「ハラミやハツも規制される!?」

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去る2014年4月17日に「第3回 食肉等の生食に関する調査会」が開催された。beef-lab.comでは過去2回の調査会を傍聴し、概要をお伝えしてきた。残念ながら今回は傍聴できなかったが、厚労省のHPに会議で配布された資料が掲載されているので、特に牛肉に関する部分について紹介したい。

以前にも書いたが、この調査会は厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の中にある「食品衛生分科会乳肉水産食品部会」の下に設置された分科会であり、

(1)食肉等の種別ごとのハザード、リスク等の整理

(2)既存の規制手法以外の対応方策を含め、リスクの大きさに応じた対策の検討

(3)その他、食肉等の生食に関する事項

について検討を進め、その結果を前述の部会に報告するものである。食品衛生研究機関、医師会、食肉業界、大学教授など13名の委員で構成されている。

過去2回の検討内容は以下の通りだ。

第1回目:危害要因の性質について(過去記事はコチラ

公衆衛生上のリスクの大きさを検討するために、まずは食肉等を汚染しうる病原体(危害要因)が引き起こす症状の重篤性や感染性の有無を検討した。

 

第2回目:流通実態とリスク低減策について(過去記事はコチラ

生食用食肉の流通実態について自治体が把握している状況を報告。また危害要因に対する十分なリスク低減策が存在するかどうかを確認するため、現在進められている食肉関係の研究について聴取した。

 

そして第3回目では、これまでの議論を踏まえて食肉の種別や部位別の対応方針が議論された。公衆衛生上のリスクが高いものについては、生レバーやユッケなどのように、加熱義務や加工基準などを検討するということで、肝臓を除く牛の内臓については、豚の内臓と並んで高リスクかつ優先順位の高いものに位置づけられている。理由は危害要因が腸管出血性大腸菌であり、危害要因による健康被害の重篤性等が大きいためだ。また内臓への汚染経路としては、屠畜時の内臓圧迫、つまりノッキング後牛が倒れこむ際に腹部に体重がかかり、内臓が圧迫された際に大腸から内容物が流出して表面汚染するのではと考えられている。そのため今後は内臓表面に付着した腸管出血性大腸菌が内臓の内部にまで浸透するか否か研究を行い、研究の結果、内部までの加熱が必要であることが明らかになれば内部までの加熱、表面付近の加熱等により十分にリスクが低減されることが明らかになればそれを踏まえたリスク低減策を検討し、牛内臓の部位のリスクに応じた衛生管理方法を策定すると資料には記載されている。同資料には飲食店において提供実態がある内臓として、胃や腸(一般的には湯引き処理等がされている)や横隔膜などが挙げられており、また過去の資料には心臓の流通実態も報告されていたため、これらの部位について今後研究が進められるものと思われる。因みにユッケとレバーの規格基準の概要は以下の通り。

●牛肉(ユッケ)

専用の設備を有した衛生的な場所において、専用の器具で行うこと。また加工に使用する肉塊は、牛肉表面から1cm以上の深さまでを60℃で2分間以上加熱または同等以上の方法で殺菌すること。そして加工は、知事が認めた生食用食肉取扱認定者が行うか、その者の監督の下で行うこと。その後冷蔵品は4℃以下、凍結品は-15℃以下で保存すること。

●レバー

牛の肝臓を使用して、食品を製造、加工または調理する場合は、中心部まで十分に加熱(中心部の温度63℃で30分以上、中心部の温度75℃で1分間以上等)すること。

「生レバーを禁止した以上、他の内臓も禁止が妥当とみられている」というような内容の報道も一部見られるが、牛レバーの生食を禁止した結果、豚レバーの生食が普及するなど新たなリスクを生み出す可能性もある。また腸管出血性大腸菌は食肉の生食に起因するものに限られず、白菜の浅漬けやサラダなどからも発生している。行政としては何かしらの規制を検討せざるを得ないというスタンスはある程度理解できるが、そのような規制に頼り切ってしまう消費者側にも問題があると思う。お上の決めたことに盲目的に従うのではなく、我々消費者が食品にまつわるリスクを理解し、セルフコントロールできるようになる必要がある。そして安易な規制を許さないためにも消費者側が声をあげることが重要だ。

今後もbeef-lab.comではこの問題をウォッチし続けて行きたい。

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